たすたすの読書録

読んだ本の感想を書く。

「BGM」 YELLOW MAGIC ORCHESTRA

 本日は番外編です。

 最近は試験勉強の追い込みで忙しく、本を読む余裕がありませんでした。でも、イヤホンなら相変わらず耳に突っ込んだまま生活していましたので、じゃあ音楽の話でもすればいっか、という当然の成り行きですが、なにか?

 これからもたまに音楽の話をすると思うので、忙しさにかまけて本を読むのをサボったんだなと、ご理解頂けると幸いです。

 

 人生がガラリと変わった経験、皆さんはお持ちでしょうか?

 

 小学一年生の頃、父から渡されたウォークマンにはやたらとノリのいい洋楽ばかりが入れられていました。QUEENABBA、ELOにPET SHOP BOYSなど……その中に、YMOの名前もありました。

 これ、聴いたことある。

 RYDEENの有名なリフでした。それからというもの、狂ったようにRYDEENだけを聴き続けました。僕のテクノ好きの起源は、そこにありました。ウォークマンに入っていたのはYMOのベスト盤だったので、後半には活動中期以降の名曲たちが入っていたのですが、小一の僕に良さが分かるわけもなく、ひたすらRYDEENだけ(たまにTECHNOPOLIS)をループしていました。

 でも、言ってもその頃はそれだけ。そのウォークマンは次第に長谷川少年の傍には置いてもらえなくなってしまい、今ではどこに埋もれているのかも分からない状態です。申し訳ないことをしたなあ、書き終わったらちょっと探してみよう。

 

 時は巡り、高校三年生になった長谷川青年。家で独りで試験勉強に明け暮れていた頃、YMOとの二度目の出会いが訪れます。

 Youtubeで勉強に集中するためのBGMを漁っていました。最初は当たり障りのないゲーム音楽やクラシックを流し、自動再生をオンにしたまま、曲を聴いていることすら忘れるくらい勉強に没頭していたそのときでした。

 YMORYDEENが流れてきたのです。懐かしいなあ~、よく聴いていたなあ。

 YMOがどれだけ偉大だったのかは色々な文献で読んで知った気になっていましたし、教授がごっつええ感じのアホアホマンに出ていたのも観ていたので、「気取らなくてカッコいいオジサンたち」という薄~い印象でした。

 ――『BGM』っていうアルバム、あんまり好きになれなかったんだよなあ。ずっと同じこと繰り返してるだけで、展開がなくて、RYDEENとは比べ物にならないくらい地味だし、でも勉強には丁度いいから聴くか……。

 本当に失礼な表現になってしまいますが――というか既にもう十分失礼なのでもう遠慮なくいっちゃいますが――他の聴きたい曲を"我慢"してとりあえず一周だけしてみました。でも、印象は大して変わらず。終わってすぐ、明らかに聴きやすい『SOLID STATE SURVIVOR』の再生ボタンに手がのびました。

 ――やっぱりYMOはこれだよなあ。

 でも、謎の使命感で、『BGM』を聴き終えるまでは『SOLID STATE SURVIVOR』禁止令を自分に課していました。

 

 『BGM』と『テクノデリック』のYMO中期を代表する二枚のアルバムは、評価が極端に二分されていることでも有名です。詰まらないという人にとっては徹底的に詰まらないけれど、最高傑作だと評価する人もいる。

 僕、思うんですけど、最高傑作だと評価する人も、たぶん最初はハテナマークが浮かんでいたんじゃないかなー、と。この音楽を最初から理解できる人って、なかなかいないでしょう、おそらく。なにかのインタビューで「これはYMOが仕掛けた音楽的な実験だ」というような文言を見た覚えがあります。これって、聴き込んだかどうかの差じゃないですか。もちろん、聴きこんだほうが偉いとか、そういった"すぐマウントを取りたがる奴"にありがちなしょうもない優越感は一切ないし、好きな曲を好きに聴けばいいと思うんですけど、難解であればあるほど理解できたときの喜びってひとしおだと僕は思います。

 だから、理解したい一心で、ひたすら"我慢"して聴きこんでいました。

 だけど、いつまで経っても分からない。同じことを繰り返しているのに変わりはないし、キャッチーなほうがノリノリになれて楽しいに決まっている。なにしろどの曲も暗すぎるし、曲としての原型を留めないあまりに曲と呼んでいいのかすら分からない"音の集合体"みたいなのまであるし……。

 

 ――でも、分からないけれど、分からないなりに、聴かないとなんとなく落ち着かなくなってきた。

 ……ええ、もう既に、沼に嵌りました。

 ここから数日間は寝る前に一周しないと眠れなくなってしまいました。もはや病的ですね。暗い曲調なんだけど、むしろそれが心地よくて、心を鎮めたいときに精神安定剤の代わりとしてよく聴きます。

 なんか、聴きたくなったような、聴きたくなくなったような――これを読んでいるあなたはどんな気分でしょうか笑。でも、音楽って薬のようでもあり、毒のようなものでもあると思いますよ。酒にも煙草にも薬物にも負けないくらいの依存性もありますし。

 

 僕はこのアルバムを聴き始めてそんなに日も経っていないですが、"僕の人生を変えた名盤"として間違いなくこれから先もこの作品を超えるアルバムとは出会えないような気がします。

 その場で感覚的に理解するのが音楽だと思っていたけれど、難解なものをひたすら聴き込んで解きほぐした先に待っている魅力や快楽を追い求めるのも音楽なのだと学べたことは僕の人生にとって、途轍もなく大きいです。これはもちろん、音楽だけに限った話ではありません。井の中の蛙が大海に出てしまったようなもので、ちっぽけな僕は未だに呆然と立ち尽くしているだけで情けないですが……。

 もう何十回、何百回と聴いていますが、聴くたびに新しい発見があるので、一向に飽きる気配がありません。おそらく、一生聴くことになるのではないでしょうか。

 

 僕も、残る音楽を作りたい。今は"所詮"ドラマーでしかないけれど。

 分かりやすい心地よさと、難解なものの奥に隠された喜びを繋ぐ架け橋になれるような、そんな音楽を作りたい。

 この一枚が僕のこれからの表現にどう影響していくかは分かりません。メンバーはそんなに興味を示していないから、明らかにテクノ路線になっちゃったりはしないでしょうけど。

 でも、話してみるとメンバーそれぞれ考えていることに関しては共通点が多くて、安心しました。たぶん、僕らのバンドはこれからもっと面白いことになっていくと思います。あくまで、僕らの基準ですが。

 誰のためでもなく、音楽をやっていいんだ。言葉ではみんな分かっている風だけど、実際はどうも難しいらしい。僕らは素でそれをやっていきたい。

 ……でも、ある程度生活できるくらいには評価されたいですが。笑

 まだなにも成しえていないから言うのは恥ずかしかったですが、将来どんな自分になろうと「言うことが変わった」なんて思われたくなったので先手打って書いちゃいました。そんな決心を後押ししてくれた一枚でした。 

 人気絶頂だったYMOが採算度外視でこんなに好き勝手やった作品を世に出すことを許したアルファレコードの心意気とか、なぜ『BGM』というタイトルなのかとか、もっと色々と言いたいことはあるのですが、長すぎるので本日はここまでに致します。

 

 

 では、折角なので、なにが折角なのかは分かりませんが、一曲一曲、僕の思い出を交えて、興味のない人にとってはどうでもいいことを延々と書いていくので、かったるいという方はもう読まなくて結構です。お付き合い頂きありがとうございました。お疲れ様です。

 

『バレエ』

 まさしくBGMの幕開けって感じです。当時、RYDEEN系統のキャッチーなテクノポップを期待した"自称YMOフリーク"たちがレコード屋さんから帰ってきて最初にこの曲を聴いたときの「……な、なんだこれは」と困惑した表情を想像すると面白いですね。僕もなりましたが。

『音楽の計画』

 BGMにおいて教授作曲の新曲が少ないのは、当時は教授と細野さんの仲が悪かったかららしいです。ほとんどボイコットしてたそうで。そのためか、なんとなく音が尖ってる感じでカッコいいです。教授の曲のなかでは結構上位に入るくらい好き。

『ラップ現象』

 この曲で細野さんが日本で一番最初にラップしたらしいんですけど、そこまで韻に重きを置いている感じではないのでしょうか。ところどころふざけているし、なによりラップ現象とラップの駄洒落ってところが細野さんらしいですね。

『ハッピーエンド』

 タイトルとは間逆のバッドエンドって感じの曲調です。教授のオリジナルバージョンから主旋律がごっそり抜かれているので、もはや曲といっていいのか分からないシリーズのPART1です。

千のナイフ

 細野さんに「千のナイフみたいな曲を作ってよ」と言われて、尖りまくってた教授が「なら千のナイフでいいじゃん!」とキレたため、YMOカバーバージョンを収録することが決まったそうです。キーボードソロのヤケクソ感から当時の教授の精神状態が窺えますね。個人的にはオリジナルよりもこっちのほうが好きです。

『キュー』

 BGMのなかでは明るくて分かりやすい部類に入るのかな。最初に聴いたときは「最後までこんな暗い感じなのかな……」と思っていたときにこの曲がきたので、とても印象に残っています。教授はある既存の曲に酷似しているという理由で作曲に参加せず、細野さんとユキヒロさんの二人で作ったそうですが、あまりに盛り上がっちゃったために曲が出来たときに二人で記念撮影したというエピソードが可愛らしくて好きです。その後、月日は流れメンバー間のわだかまりもなくなり、ライブでこの曲をやるということになったときに教授が自らドラムパートを志願したというのも心暖まる話です。

『ユーティー

 北園高校の太陽神のことではありません。この曲、ドラムが「ドドドドタタッ」ってフレーズなのですが……ユキヒロさん、シングルペダルですよね。一体、どうやっているのでしょうか。頑張って踏むしかないですね。いつかユキヒロさんに直接「この曲のドラム、凄いですね」って言って「ええ、凄いです」って返してもらうのが夢です。

『カムフラージュ』

 4分33秒からの日本語詞、エフェクトがかかっていてはっきりとは聞き取りにくいですが、めちゃくちゃ怖い歌詞です。いかにも精神病って感じです。

『マス』

 YMOのなかでも一二を争う胸アツ展開、特に後半にかけて。僕の勝手なイメージですが、宇宙船がこれから出航する感じがします。

『来たるべきもの』

 無限音階というものが面白かったからそのまま曲にしちゃったという、曲といっていいのかわからないシリーズPART2。というよりは、アンビエントです。寝れそうなやつです。個人的にはテクノデリックの『後奏』のほうが良く寝れますがあの曲だと本当にそのままポックリ逝っちゃいそうな感じがするので、寝る前はこっちを聴くようにしています。

 

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